ブログ

最適化問題と意思決定の透明性、その3

  • 2020/04/03

富士産業有限会社、下代勝レポート。

 

新型コロナウイルスの影響で、世の中が大変な事になっています。

会社から直ぐそこの桜を撮って来ました。

少しでも心が和めば幸いです。

 

それでは続きを始めます。

 

3) 要求される対応速度の速さについて。

対応速度の要求について有名なのが、為替取引。

日経新聞同日記事によると、東芝の試作機が、八種類の通貨の為替取引の組み合わせの中から利益が最大になる機会を9割の確率で見つけ、30マイクロ秒で注文する性能を実証した、とか。

もっとも、この試作機は、量子コンピューターから着想を得た新技術を使い、デジタル回路を使う従来のコンピューターで量子コンピューターの計算を疑似的に行うという物で、厳密には量子コンピューターではありません。

それでも、量子コンピューターの最適化機能のインパクトの強さ故に、疑似的技術で実用化を急いでいるという事ですので、量子コンピューターの最適化機能の凄さを否定するものでもありません。

30マイクロ秒は、極端な例ですが、量子コンピューターの最適化機能を実社会で有効に実用化していこうとすれば、AIとタッグを組ませて、高速で処理していく必要が出てきます。

 

金融市場では、「量子コンピューターなど高速計算技術が発展すれば、ポートフォリオ(投資の分散と、その分散の組み合わせ)を最適化するための計算式が決まっている取引はスピードがものすごく速くなるだろう。資産価格は速く強く連動するようになり、ボラティリティー(変動率)を大きくする可能性がある」(日経新聞2020年3月26日、和泉潔氏のインタビュー記事を下代注釈)と新聞記事にも未来予測が載るようになりました。

 

今回の新型コロナウイルスの影響で、株価が大きく値下がりした最中に、市場の売買注文の7割を占め、一秒間に数千回の取引をしていると言われるHFT(高速取引)業者の中には、アルゴリズム(コンピューターによる自動取引)の電源をオフにした業者がいると言われています。

それは、株式売買のプロから見て、どう考えてもアルゴリズムが有効に機能していない(AIはリーマンショックを越えるかも知れない状況までは学習出来ていない)と判断したからでしょう。

しかし、その判断が出来るのは、ほんの一握りのプロのはず。

 

近未来において、株式売買だけでなく、あらゆる金融商品が組み合わされたポートフォリオの舞台で、それ(AIが有効に機能しているか)を判断して、取引の最中に電源をオフに出来る人間が果たして存在し得るのかは大いに疑問です。

 

生身の人間が理路整然と処理出来るような時間単位ではないという事は言うまでも有りませんが、単一の株式売買の中で生かせたプロの「勘」を、様々な金融商品を組み合わせて最適化されたポートフォリオの中で発揮出来るとはとても思えません。

「勘」に頼って当たる確率が低くなれば、「勘」に頼って莫大な損失を出した者は、その業界から去って行くことでしょう。その先輩の背中を見て、同じ事をする人は段々といなくなるはずです。

 

ここに出て来た株式や為替と言った話は、普段の生活とはかけ離れている感じもします。しかし、人生に安定をもたらすはずの各種積立金も、金融市場で運用されている以上、アルゴリズムと人生設計は既に無縁ではありません。

 

話が金融市場に偏りすぎましたが、瞬時に答え(の候補)が出て、瞬時に実行していく事が一般化して来ると、最適化機能で重要な事は、プログラミングの理論ではなく、どういう組み合わせの最適化を計算すれば実社会で有用なのか、それを発見する事だと主張する人もいるようです。

 

この実用化の過程の中では、AIの計算結果が本当に正しいかどうかの検証(時間)は既にありません。

人間が関与出来る余地があるとすれば、日々進んでいる実用化から一歩引いて、その計算結果にほぼ自動的に従う事になるシステムを採用するのかどうか、積極的に決めていく事だと思います。

人間の幸福感にも関わる問いです。

その決定をする事に消極的であるならば、最適化機能を駆使したAIの決定に自動的に従うというシステムの中で、知らない内に生命や財産の優先順位をつけられている事になると思います。

それが楽(社会学で良く話題になる「自由からの逃走」)というのも、有力な選択肢の一つです。そういう人間の習性もあるには有ります。

まさしく、どちらにするかは積極的に選択すべき事柄だと言えます。

 

これで量子コンピューター関連のレポートは一端終了です。

未来予測の一例として、考え方のヒントになればと願っています。